夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story
「触んな! 何すんのさ!」


「えっ」


彼女はぎょっとして、一瞬固まった。


けれど、すぐに鋭い目つきになって、あたしの手からそれを奪おうとする。


「だめよ。手術が終わったら、必ず返すから」


「いや! 絶対やだ!」


だめよ、いや、だめったら、いやだってば。


繰り返しながら、あたしと看護師さんは、補欠がくれた折り鶴を引っ張りあった。


クシャリ。


折り鶴が、羽根からほつれてしまった。


「あーっ!」


慌てて奪い取って、ほっとした。


良かった……切れてない。


「切れたらどうしてくれんのさ! バカッ!」


怒鳴りながらほつれを直していると、


「……え……っ」


中に何か文字が書かれてある事に気が付いた。


切れてしまったりいないようにゆっくりと折り鶴を開いて、あたしは息を止めた。


嘘……。


書かれていたのは、補欠の筆跡と思われる汚い字だった。


【翠の笑顔、翠色】


「……補欠」


とっさに、折り紙を胸に抱きしめた。


なんて強烈なんだ。


「補欠……」


なんて強烈な魔力なんだ。


凄まじいなんてもんじゃない。


補欠流黒魔術。


この魔力は地球を破滅させてしまうんじゃないだろうか。


あまりにも、強烈すぎる。

< 462 / 653 >

この作品をシェア

pagetop