夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story
大好きな学校を休むのも、友達に会えないのも、補欠の負担になるのも。


入院も手術も、うんざり。


一体、何のために生きているのかさえ、あたしは見失いかけていた。


誰か居ないのかな。


快く、この病気を代わりに背負ってあげましょう、なんて本当に代わってくれるような人。


あしながおじさんみたいな人。


まっ白な枕を抱きしめて、母が唇を噛む。


とても、悔しそうに。


そんな母を、あたしはキッと睨みつけた。


「代わる事も出来ないくせに! クヨクヨすんなとか、なんでお母さんに言えんの? バッカじゃねーの?」


何やってんだ、あたし。


こんなこと言いたいわけじゃないのに。


言いたくないのに。


「ごめんな、翠」


母の美しい瞳から、ついに涙があふれた。


「謝ってすむなら、警察要らねえんじゃ!」


最悪。


母を泣かせる事だけは、絶対に嫌だったのに。


こんな簡単に泣かせてしまった。


母は何も悪くないのに。


……大好きなのに。


もう、頭の中がグチャグチャで、心はズタズタで、何が何だかさっぱり分からなくなった。


「もうっ……疲れたんだ、あたしっ……」


気づいた時、あたしはベッドの上に立ち、我を忘れて号泣していた。


涙なのか鼻水なのか分からないくらいに、顔中びしょ濡れだった。


「すまんな、翠……ごめんな、ごめ……」


枕に美しい顔を押し付け、声を押し殺して泣く母が小さな小さな妖精に見えた。


「お母さん、あたし……あたし……これからもこんな事の繰り返しなの?」


手術して、再発して、手術して、また、再発。


「こんな事の繰り返ししてて、ちゃんと大人になれんの?」
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