夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story
日本に、こんな小さな国にもこんな場所があったのかと、胸が高鳴った。


夜に駅を発ち、甲子園球場に到着したのは、決戦の朝だった。


南高は全校応援で、歴代のOBも勢揃い。


母がまた長谷部先生をあのファンキーな迫力で言い負かし、あたしは一時退院という名目のもと、みんなと一緒に甲子園に行く事が出来た。


清潔な陽射し煌めく、濃ゆい夏のスカイブルー。



分厚い雲が群になり一定の距離を保ちながら、上空を浜風に流されていた。


蔦の葉に埋もれる、外壁。


超満員の応援スタンド。


対戦校は甲子園常連校とうたわれる強豪校だった。


おそらく、大差で南高校が敗退するだろうと、あちらこちらから根も葉もない予想が飛び交っている県を出て、もう半日が経っていた。


先制点を取ったのは、相手側だった。




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001 110
星匿工


終盤に入ってもなかなか得点できず、このまま、根も葉もない予想通りに負けるだろう、とあたしは不謹慎な事を考えていた。


やっぱり、全国の壁はモンスターだな、なんて。


しかし、7回、南高が一点を返した。


けれど、反撃は長く続く事はなく。


8回が終わって、1対3。


ここまでか、そう思った矢先の9回表、南高の攻撃。


最終回。


きっかけは、健吾のヒットだった。


一点返して同点に追いつき、勝ち越しの一点をもぎ取ったのは、補欠の意地に一打だった。


しかも、9回の表、ツーアウトという究極の一場面で。


この崖っぷちに立たされた土壇場で、補欠が打ち返したボールは繊細な弧を描き、センターとライトの真ん中を鮮烈に抜けて行った。


3塁走者がホームベースを駆け抜けた瞬間、応援スタンドは歓喜に狂い、ぐらりと揺れた。


南高校、最終回ツーアウトからの猛追。


一点の勝ち越し。
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