夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story
乱れた髪の毛が、そよぐ風に揺れる。


「おまえたちに、補欠の良さが分かってたまるか! ヘンッ。分かられても困るけどな! ハンッ」


分かるもんか。


誰にも分からないと思う。


「結衣、明里」


あたしはふたりの顔を交互に見つめた。


おお、なんと可哀想な子羊たち。


あんなに綺麗な優しい目をしている男は、なかなか居ないだろう。


宇宙をくまなく探したって、なかなか見つからないと思う。


「補欠はいいぞー。なんで分かんないのさ」


偉ぶってふんぞり返るあたしを見て、結衣と明里は目を合わせて同時に吹き出した。


ブハーッと豪快に。


「「つか、分かんねーし」」


ふたりは目で会話をしながらニタニタ笑って、わざとらしく声を揃えた。


「「分かりたくもねえけどー」」


「けしからーん!」


ガッターンと椅子をなぎ倒して、あたしは立ち上がった。


「「始まった始まった」」


ふたりはやれやれ、と両手でジェスチャーして、ため息混じりに笑う。


あたしは腹の底から声を出して、仁王立ちした。


「補欠を悪く言うやつは全員、死刑に処する! ぶっ殺ーす」


補欠のことをバカにするやつがいたら、ただじゃおかない。


このあたしが、許さない。


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