夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story
爽やかな外見とその気さくな性格から、全校生徒、男女隔たりなく人気を集めている。


右目の下にぽつりと存在する泣きぼくろが、彼のチャームポイント。


「騒いでいないで早く帰れー。帰って勉強しろー。勉強ー」


補欠のことを悪く言うやつは、許さん。


例えそれが、どんなに人気者の教師であろうとも。


あたしは許さん。


「にべちゃん!」


「なんだ、翠」


「勉強どころではないのだ!」


あたしが言い返すと、クラスメイトたちが必死に笑いをこらえてプルプル震えていた。


「教師が思ってるほど、高校生は暇じゃないのだ!」


「何? 高校生なら勉学に励めー。まったく。翠の声、廊下まで筒抜けだぞー」


「ヘイ、ティーチャー! リッスントゥーミー! こいつらが」


と、あたしは結衣と明里の顔を指差した。


「夏井響也の悪口言ってました! いけないことだと思いまーす。イジメだと思いまーす。イジメでーす」


「翠……」


お笑いコントのようにガクッと転ける真似をして、にべちゃんが笑った。


「小学生のつげ口か! ほんとに夏井のこと好きなんだなあ」


にべちゃんはクククと笑って、


「夏井もほどほどにしてさっさと帰れよー」


と職員室の方向へ歩いて行った。



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