夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story
どうしたものか、と思う。


あたしの恋心はクラスメイトだけでなく、にべちゃんにまで知られているのに。


知らないのは、本当に補欠くらいなのだ。


「ほらあ、にべちゃんも帰れってさ」


いつの間にかメイクポーチを鞄にしまって、帰り支度を終えた結衣が席を立った。


「翠、明里。マックにでも寄って帰るべ」


「いいな、乗った。シェイクでも一杯ひっかけてくか」


と仕事帰りに居酒屋に寄る会話をするサラリーマンみたいな口調で、明里まで鞄を肩にかけていた。


周りを見ると、残っていたみんなも教室を出ようとしているところだった。


「お待ち!」


あたしが引き止めると、結衣と明里が同時に振り向いた。


「あたし、トイレ。ちょっと待っててよ。マッハでしてくるから」


「「はいはい」」


クスクス笑うふたりを残して教室を出ようとした時だった。


「あの、すみません」


その人は、突然、現れた。


教室の入り口で、ハタリとはち合わせになったのは、女の人だった。


「あの……」


と遠慮がちに肩をすくめた彼女を見て、あたしは頭の本棚から翠辞書を引っ張り出した。


このひと……誰だ。



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