夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story
「あ……えっと。野球部の夏井くんは、このクラスだって聞いて来てみたんだけど。違うかな?」


わざと少し間を置いて、あたしは答えた。


「そう……だけど」


言葉がつまる。


戸惑った。


ガサツなあたしとはまるで正反対のその清らかな出で立ちに、完璧に戸惑った。


天と、地だ。


月と、スッポンポンだ。


「ああ、よかった。間違えたのかと思った」


クス、とはにかむ仕草が、どこぞのお嬢様みたいで清楚だった。


「夏井くん、居ますか?」


その声まで清く、可愛らしい。


ステキ女子とは、こういう人を言うんだと思う。


たった今、教室を出たばかりのクラスメイトが数名、戻ってきた。


たった今、教室を出ようとしていた者たちも立ち止まる。


突然現れたよそ者を、じっと見つめていた。


ひそひそ、耳打ちしている者もいた。


結衣と明里が呆然と立ち尽くしている。


「夏井くん、いる?」


体の穴から毛穴から、拒否反応物質が一気に噴出した。


「居ないけど」


つっけんどんに返したあたしを見て、彼女は「あ……」と華奢な肩をすくめた。


「そっか」


「てか、部活行ったから」


ますますつっけんどんに返すと、彼女はハッとした顔をして小さく苦笑いした。


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