夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story
「実は私、夏井くんのファンで。友達になりたくて」


ホームルーム終わってすっ飛んで来たんだけどな。


間に合わなかったみたい。


と、涼子さんは肩をすくめた。


「急いだんだけどなあ」


「え……」


補欠の、ファン。


「仕方ないよね。野球部だもんね」


涼子さんの笑顔を見て、何とも言えない得体の知れない固い物に、あたしは打ちのめされた。


ガイーン、と一発。


なんてこった。


このあたしとしたことが、完全に油断していた。


ライバルが出現するとすれば、同じ1年生だろうとばかり決めつけていたのだ。


上級生という存在をすっかり省いていたことに、情けなくなった。


しくじった!


完全なる完璧の、Midori’sケアレス・ミス。


なんてこったい。


まさか、第一号ライバルがこんな美人だとは。


しょっぱなからモンスター並の強敵じゃないか。


いきなり、クッパが現れたようなものだ。


この美しさ、花に例えたらまさしく桜だ。


ソメイヨシノ。


淡いピンク色の花びら。


可憐で清らかで、それでいて、儚げな。


ヤマトナデシコとは、涼子さんのためにあるような言葉だ。


「補欠に何の用?」


あたしが聞くと、涼子さんは小首を傾げた。


「……ほけつ?」



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