原石のシンデレラ
「ーーーー…まぁ!!」


「ーーー坊ちゃまぁ!!」


遠くから高級感溢れる真っ黒な車の窓から、顔を出して叫んでいる白髪の人が見えた。


「……じぃや」

男性がポツリと呟くと、私は間抜けな声を出した。「え…?」


《…パタン!》

「炉惟(ロイ)坊ちゃま…捜しましたよ。ご無事で何よりで御座います…さぁ、お屋敷に帰りましょう。皆が心配しておりますよ」

ーーお、お坊ちゃま?


「じぃや…すまない、迷惑をかけてしまって…道に迷った上に、貧血で倒れてしまってね」


ーこの人、炉惟(ロイ)って言うんだ。


ポカンとして眺めていると、"じぃや"と呼ばれてる白髪の男性がチラリと私を見るなり、怪訝な表情を見せた。


「坊ちゃま…こちらのお方は…?」


何だか言葉遣いと云い、この白髪や高級車を見ると、ただ者では無いようなオーラを放っている。


「じぃや…心配しなくても結構ですよ。こちらの方は、僕を助けてくれたお方なんですから。」


炉惟は、ニコリと微笑んでいる。


「ーそうでしたか、坊ちゃまを助けて頂き、なんと御礼を申し上げたら宜しいものか…」

「あ、あの…私、大したことはしてないので…」

オロオロとしていると炉惟が、「名前を、まだ伺っていませんでした。…僕は、炉惟(ロイ)と申します…貴方は?」


「き…木下…雪詩(キノシタ,ユキシ)です」


「ほう…ユキシ…ですか、漢字はどんな…?」

「ゆ…雪の詩(ユキのウタ)と書いて、雪詩です」

「素敵なお名前ですね、貴方と是非、ゆっくりお話がしたいのですが…宜しいでしょうか…?」


「あ…あの、私…これからバイト…じゃなくて、お仕事があるんですけど…」


「なるほど…まだ学生のように見えましたが…お偉いんですね。ご両親も、さぞかし…お喜びでしょう」


胸がチクリと痛み困惑した。


「ーー父と母は、1週間前に事故で亡くなりました…」


「……ゴホン、そうですか、不謹慎なことを言ってしまい失礼しました。…ご冥福をお祈りします」


そう言うと炉惟はペコリと会釈をした。


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