原石のシンデレラ
ーー携帯で時間を見てみると、もうバイトの時刻は過ぎてしまっていた。


「あの、私…これで失礼します。仕事に間に合わないので…」

クルリと方向転換して、1歩前に進み出そうとしたら、後ろからグイッと腕を引っ張られて、私はバランスを崩して炉惟の身体で受け止められた状態になった。


意外と細身な割に広くて大きな身体に、私は不意打ちで胸がドキッと高鳴る。


「ーー気に入りましたよ。」

「…へ?」

耳元にかかる生暖かい息が、くすぐったくて、変な気分になる。


「じぃや…雪詩さんを、家にお連れしたいのですが」

「…宜しいですよ。御礼も兼ねて…」


私の返事も聞かずに、勝手なことを言い出している炉惟さんに、私は半分呆れてしまった。


ーーちょっと、人の話も聞かずに…


「……では、どうぞ…」

炉惟の手に誘導されて、私は渋々、車へ乗り込んだ。



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