スターフィッシュ‼︎


それから、いろんな出店が並んでいる飲食スペースに来てみた。


「あ、美緒ちゃん! あたし休みとって来ちゃった~!」

「あーもう、年甲斐もなく騒ぐんでねーよ」


何と、食事用のベンチに座っていたのは、ゆーたと……ゆーたのお母さん!

茶髪にキャップ、ロックっぽいTシャツに細身のジーンズ。

おお、相変わらず若いっ。


「あー! ゆーたのお母さん! ご無沙汰してますっ」

「本当にすごいね! 美緒ちゃんもゆーたもこんなに人がいるところでライブやるんだね! 2人の出番になったら前の方行っちゃおうかな~」


「はぁ。おめーまた腰痛くするべ? ここらで座って見てろって」

「え〜、あたしだって昔はオールで派手な服着て踊ってたのにぃ」


ゆーた、意外とお母さん思いなんだよね。

2人の漫才のような掛け合いに笑いながらも、じーんと胸の中が熱くなった。


優勝して全国CDデビューできたらお金が入るだろうし、ゆーたも就職しないでバンドに専念できるのかもしれない。


そんな考えが頭の中をよぎったけど、

それよりも、ゆーたのお母さんに、最高のライブを見せてあげたい!


ゆーた……昔は荒れてた時期もあったらしいけど、

今ではこんなにバンドを楽しんで、夢に向かって走り続けているんだよ、って

ライブを通じてゆーた母に伝えてあげたいなぁ。


そう思っていると、

「お、次が山吹色の夢の出番かー。せっかくだしもっと近くで見るべ」

と言って、ゆーたが立ち上がった。


「おおお、楽しみ! どんな感じなんだろうね」


ゆーた母に軽く会釈をしてから、あたしたちはステージの方へ向かった。

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