鋼鉄の国のアリス
空が、きれいだと唐突に思った。

と同時に視界が歪んでぼやける。

「大丈夫?」

先ほどと同じ言葉をアリスは繰り返す。

彼女の平坦な声を少年はありがたいと思う。

感情を感じさせない無機質なそれは、自身の記憶を抉らずにいてくれた。

簀巻きにされているために顔を隠すことも涙をぬぐうことも出来ないけれど。

少年は薄く笑った。

少女が敵でないことをいつか、確信していた。

そしてそのまま彼は瞼を閉じた。
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