人間姫

ザザ……

白い波が追いかけっこを続ける浜に、ニーナはいた。

飼い犬のエディも一緒だ。
コッカー・スパニエルのエディは、ニーナが去年の誕生日にもらった犬。
今年はエディの家を買ってもらう予定でいる。

「エディ、いつ会えると思う?」

ブロンドの髪を揺らしながら波打ち際の貝殻を拾うニーナ。

そう、ニーナはこの十年間、ずっと人魚を探していた。

リザに連れて来てもらったとき、当然人魚には会えず、リザに再び人魚の存在を否定された。
それがニーナにとってたまらなく悔しく、毎日海に来ることが習慣になっていた。

ザザ……

波は一定のリズムで追いかけっこを続けるだけで、人魚を見せてはくれない。
ニーナは砂のついた貝殻を沖に向かって投げた。

「あぁエディ、いっそ海に入って確かめてみたいわ」

海には絶対に入るなと、父から言われていた。
そもそもこの王国は、「泳ぐ」ということを知らないのだ。
だから、ニーナも海にははいれない。
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