辻斬り
「お前らほんとにテントでいいのか? 暗いし、風邪引くぞ?」

めぐみたちは目で灘を追い払った。

——何かいそうな雰囲気のある場所には極力お近づきにはなりたくない。
特に、いわくありげなオヤジの群れの中には。
あんな話を聞いた後には、特に。

それが彼女らの総意だった。

まなみは念のためお守りを持ってきていた。怪しい男よけも含めて気休めにしかならないけれど、テントの入り口にそれをぶら下げておいた。
お守りには「交通安全」と書かれていた。
灘は仏長面をさらにゆがませて紀伊に言う。

「別に何が出るわけじゃなし、女ってのは、アレだよなあ」
「あれ、とは?」
「あれだよ、あれあれ…その、あの、バリケード!」
「…デリケート」
「…似たようなもんだろうが!」
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