辻斬り
今日は、特別だ。

過去を振り返り、まず思い浮かべたのは娘のことだった。
生まれた時は眼に入れても痛くないほどかわいいと思えた。
よりいっそう仕事に励み、家族を支えようと誓った。
仕事が、彼のその信念を支えてきた。愛する妻子が拠り所だった。
だが、ある仕事をきっかけに仕事と家庭のバランスはもろくも崩れ去り、家庭のこともそっちのけで仕事を続けた結果、彼はいつしか家族を忘れた。

忘れるしか自分を守る術がなかった。

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