メガネ夫婦
「…はい」
びっくりするほど
低い声を出す彼
「あ!夜分遅くすみません。今日お会いした、桜田です」
「ええ。どうなさったのですか?」
玄関まで出るつもりは
彼にはさらさらないようだ
「あの、藤宮なんですけど、いないみたいで。知りませんかね」
彼と彼女は顔を見合わせた
まさかここにいます
なんて言えたもんじゃない
「知らないですね」
彼は強く答えた
「そう、ですか…もうこんな時間ですし、心配で」
時計を確認すると8時半すぎていた
「先生こそ、こんな時間に女子生徒のお家なんて非常識じゃないですか」
彼女がびっくりして
彼の手を強く握る
「いや!僕は別に…!!」
「それに彼女だって、イマドキな女子高生ですよ?一人暮らしだし、彼氏の家にでも行ってるんじゃないですかね」
彼はかなりイラついてる様子で
ベラベラと言う
「ふ、藤宮はそんな子じゃありません!!」
「別に悪いことじゃないでしょう」
「ですが、そんなこと!!!」