勇者様と従者さま。
「旅に出ましょう、従者さま!」


 その朝。

 エヴァはアーサーと顔をあわせるなり言い放った。

 アーサーは眉をひそめ、

「よく考えてものを言え、エヴァ様」

「か、考えてますー!」

「…ほら、鍛練を始めるぞ」

「無視ですか!」

 エヴァが食い下がる。アーサーは面倒そうに振り向いた。

「この前は何も考えてなかったくせに一体全体どういう風の吹きまわしだ」

「っていうか!わたし魔王倒しに行かないといけないんですよね?」

「まあ、そうだな」

「善は急げ、ですよ。もう勇者講義もあき…いえ、なんでも。早く行きましょう!」

「…エヴァ様?」

「ほ、ほら!練習もいいけど実践も大切ですよ!!」

 エヴァのごまかしを聞き流し、アーサーはしばらく思案する。


 エヴァの主張はともかく、確かにそろそろ旅立ったほうがいい。

 魔物が活動しているというのに勇者がのんびりしていては国中の批判の的だ。

 ついでに従者の自分にもとばっちりが来る。

「…そうだな」

 アーサーは頷いた。

「行くぞ」

 言うなり方向を変えて歩き出したアーサーにエヴァは追いすがる。

「えっそんないきなり?まだ準備が…!」



 そのままアーサーはエヴァを引き連れて旅立った…わけではなく、王宮に参上した。

 手短に出立の旨を伝える。

 魔王退治はまだかと首を長くしていた王には当然大歓迎で受理された。

 こうして二人は旅立ちを決めた。

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