勇者様と従者さま。

見ていろエヴァ様、あれが魔物だ。

 そして、数日後。



 エヴァとアーサーの後ろに長い行列が続いていた。

「わあ、すごい行列」

 エヴァが呑気な声をあげた。

 エヴァは騎馬だ。

 アーサーにとって意外なことに、エヴァは馬に乗れた(農村育ちの彼女にとってはごく当たり前のことだったが)。

 二人の後ろに徒歩の剣士が続き、さらに弓士や僧侶、果ては料理人までが並んでいた。

 国中から集められた魔王の討伐隊、つまり勇者の部下である。


 勇者の旅立ちの日。

 王都はちょっとした祭なみの騒ぎだ。

 有り難い<勇者様>を一目見ようと集まった群衆が通りにあふれていた。

 エヴァはいつもの服より幾分華麗な衣装にマントをなびかせ、勇者然としている…見た目だけは。ただし幼いが。

「ずいぶんかわいい勇者様」という囁きがそこかしこから聞こえている。


 それでも、エヴァの馬が前進を始めると大きな歓声が上がった。

 城門が開く。

 歓声に見送られて、勇者は旅立った。

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