勇者様と従者さま。
 アーサーは目眩を感じた。

「じゃあ…何か。今回は建国時代以来の高位の魔物があらわれていると」

「聡いのう」

 シュリは楽しげに笑う。


 アーサーは笑うどころではない。

 これまでアーサーが倒そうとしてきた魔物は皆雑魚に等しく、それよりもっととんでもないものを倒さなくてはならない、と言われたのだから。

「…待て。まさかこれまでの魔王っていうのは」

「実に聡い。…そう、本物の魔王ではないだろう。少し高位の魔物が現れただけでいちいち大騒ぎしていたのではないか?」

「信じられん…」

 アーサーは呆然と呟いた。

 そして、あることに気付く。


「エヴァ様、やけに静かだな」

「…聖剣を握ったときに、なんとなくわかってしまいましたから」

 エヴァは答えるが、どこか心ここにあらずという様子だ。普段の無駄なまでの元気のよさはない。

「同調したときに我の記憶が流れ込んだらしくてな」

 シュリが痛ましそうに溜息をつく。

「混乱するのも無理はなかろう」


 いつの間にか夜も明けかけていた。

「さて、大方のことは説明しつくしたな」

 シュリが話を打ち切る。

「とにかく、我はエヴァをあるじと定めたのだ。あるじが魔王を討つというなら、その日まで我はあるじを護ろう」

「…はい」

 エヴァは小さな、しかしはっきりした声で答えた。

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