勇者様と従者さま。
 一方、アーサーである。

「エヴァ様?エヴァ様…この先か?ああもう、世話の焼ける!」

 ぼやきながらエヴァが足を止めた付近と思われるドアを片端から開けていく。

 あらかた開け尽くしたあと、最後に残った、少し色の違うドアに手をかけた。

 錆び付いているのか、なかなか動かないそれをなんとか押し開けると。

「…地下、か」

 下へと階段が伸びていた。


 アーサーは一瞬迷う。

 屋敷の中はまだいくぶん光があったが、階段の先は見るからに真っ暗である。

 シュリがいない今、アーサーは光るようなものを持っていない。

(だが…いかにもエヴァ様が好きそうな雰囲気だ)

 そして、アーサーは怖…否、苦手な雰囲気でもある。

 そう。いかにも何かありそうな感じがするのだ。

「…仕方ない」

 アーサーは苦渋の決断を下した。


「エヴァ様ー!おい、エヴァ様!」

 石造りの階段に、アーサーの声がむなしく反響した。

 聞こえるのは、自分の声のこだまと、ブーツの底が床を打つ音だけ。

「エヴァ様…どっかで転んでるんじゃないだろうな」

 階段を下りるほどに闇が深まる。

 すでに足先で探りつつなんとか進んでいるような状態だ。

 そんな中、突然段がなくなった。

 地下に着いたのだろうか。

 確かめようにももう真っ暗で何も見えないに等しい。

 伸ばした手が何かに触れた。

 細かな彫刻だ。

 その凹凸に沿って指を滑らせると、把手とおぼしき突起に触れた。

 どうやらドアであるらしい。

 軽く押してみると、嘘のように滑らかに開いた。

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