Love.Love.Loving!

声は、無機質。伸びてきた両手はそれから後ずさろうとするあたしの身体を簡単に捕らえて。ギュッと腕に納める。


『…っや、っ!』


抱きしめられて、バタバタとその中で暴れるあたし。それでも希唯君は離さない。離さなくて、ずるくて酷い。


「香彩」

『っ、』


ずるい。ずるいずるいずるい。

初めて言葉を交わした日から今日までの中で聞いたことがない。今までで一番優しい音を奏でた声。

そんな声、ずるすぎる。

腕から出たいはずなのに抵抗をやめてしまう。したくないのに、ドキドキして、顔に熱が集まってきてしまう。


ていうか、あたし。希唯君のこと好きでもないのに、なんでこんなに傷ついてるの?許せないって気持ちが大きいのはなんで?

もう、ごちゃごちゃだよ…。


暴れるのはやめた。けど、ムカつくからドンッと胸を叩いてやる。希唯君が、小さく苦笑したのを感じて。


「俺が、香彩泣かせちゃったんだよな…?」


掠れた、弱々しいその疑問符に『っそう、だよ』ドンッとまた胸を叩いてやった。

希唯君は、泣かせた自覚はあっても、なんで泣いてるかはわからないと言う。
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