ホワイト・メモリー
まずは、敵陣のプレゼンから始まった。不測の事態にあらためて相談している時間はない。プレゼンターは三十代後半といった感じであろうか。オールバックにした髪にちらほら染め残した白髪が混じっていて、カフスボタンのセンスも少々古いような気がする。その隣に座っていた敵陣のマネージャと思わしき男に何か助言をもらったようだが、プレゼンターの顔は不安そのものだ。敵陣は、あくまでも自分達が作成した資料をベースにプレゼンを展開した。いや、そうするしか方法がなかったのだろう。塚越の唐突な質問に柔軟に回答する余裕を失っているのは見え見えだった。
塚越の“簡単な説明”というリクエストに対しては、なんとか優しい口調で説明することくらいが精一杯で、びしっとスーツで決めたコンサルが、口調なんぞでごまかそうとする様子が滑稽だった。
敵陣のプレゼンは予定時間を10分もオーバーした。塚越は腕時計を見て「次、行こか」とちょっといらいらした様子で言った。
さて次は我々の番である。プレゼンするのは田辺という功も知っている先輩だ。こころなし顔が青ざめているように見える。その隣に座っている菊池も固まっていた。
思ったとおり、田辺は、準備してきたプレゼン資料を手にとって席を立った。
「いや、そうじゃないでしょ、先輩…」功は思ったが、言葉にはならなかった。自分が出ていくタイミング。何かきっかけが欲しい。
塚越の“簡単な説明”というリクエストに対しては、なんとか優しい口調で説明することくらいが精一杯で、びしっとスーツで決めたコンサルが、口調なんぞでごまかそうとする様子が滑稽だった。
敵陣のプレゼンは予定時間を10分もオーバーした。塚越は腕時計を見て「次、行こか」とちょっといらいらした様子で言った。
さて次は我々の番である。プレゼンするのは田辺という功も知っている先輩だ。こころなし顔が青ざめているように見える。その隣に座っている菊池も固まっていた。
思ったとおり、田辺は、準備してきたプレゼン資料を手にとって席を立った。
「いや、そうじゃないでしょ、先輩…」功は思ったが、言葉にはならなかった。自分が出ていくタイミング。何かきっかけが欲しい。