ホワイト・メモリー
「すみません。ちょっといいでしょうか」

「はい、小林さんどうぞ」

田中はこれから起きる事件を予想できるはずもなく、落ち着いた口調で功を指名した。

「残高照合の業務プロセスの見直しには賛成しますが、担当者のスキルアップと担当者への責任委譲には反対です」

一瞬にして会議室の空気が張り詰めるのが分かった。時計の針はまもなく十八時になろうとしていた。せっかくケーススタディのまとめの意見を加藤がしてくれたのに、こいつは何を言い出すのかという顔をする者もいた。
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