ヒトノモノ
「おっす・・・ごめん突然・・・」
「あ・・えっと・・・どうしたの・・・ってか、なんで家を?」
・・あ・・この間、一緒に買い物に行ったときに目の前まで送ってもらったんだった・・・
「・・ちょっといいかな・・」
田中君はそう言いながら部屋の中をチラっと見た。
「あ・・ごめん。今部屋散らかってて・・・外じゃだめかなぁ。すぐソコのファミレス行ってくれない?すぐに行くから・・・」
あたしはそう言って無理矢理ドアを閉めようとしたけど、田中君が足をドアに挟み、閉めることもできなかった・・・
「木村さん・・・中にいるの?」
「・・・・・・」
驚きで言葉も出ない・・・
「俺・・・木村さんとの事・・知ってるんだ。」
「・・なんのこと??」
「・・・木村さんの奥さんから聞いたから・・・」
あたしは、一気に足の力が抜けていった。
ヘタっと座り込もうとしたあたしを田中君は抱きしめた。
「・・・木村さんのことはもう止めとけって・・・辛い想いするだけだから・・・」
田中君の言葉にあたしは堪えていた涙を止め処なく溢れさせた・・・