ヒトノモノ
田中君は抱きしめていた腕を一瞬緩めた。
顔はそのままで、視線だけを右にずらす・・・
「・・・最低な男だな・・あんたって・・・」
その視線の先に啓介がいた。
啓介は、はぁーーーとため息をつく。
「嫁がお前に色々吹き込んだみたいで?」
「あのさ・・・あんた、出世すんだろ?だったら不倫なんてばれたらまずいんじゃないの?」
「なに、それ。脅し??お前にとやかく言われる筋合いないけど??」
田中君はあたしを腕から解放して、啓介に向き合った。
「俺は、あんたみたいな男大嫌いなだけ。」
「・・田中君!!」
あたしはその場の雰囲気が険悪なものになるのを感じて、二人の間に入った。
「なぁ・・安達。俺は安達が好きなんだ。俺は安達を待ってるから・・・あとは二人で話して・・・」
田中君はそう言うと、啓介の横を通り過ぎて行った。