ヒトノモノ
「あたしは、啓介が好き。愛してる。・・でも・・それだけじゃ満足できなくなってるの。啓介の一生をあたしにくれないと満足できないの。でも、啓介にはソレが出来ないでしょ?
だから・・・あたしと別れてください。あたしに普通の幸せが経験できるように・・・別れて下さい。」
あたしは目をとじたまま・・・
涙が頬を伝うのも気にしないで、啓介に別れを告げた。
啓介は無言のままベッドから降りてリビングに向かう。
リビングからは啓介の嗚咽だけが響いていた。
あたしも布団を頭までスッポリ被り、自分の指をギュっと噛んで泣いた。
朝、目が覚めると啓介の姿はなかった。