AZZURRO
ほどなくして戻ってきたジャンは
クリスを広間の隅に招く

「申し上げます。
控室に行きましたが…
ユキノ様のお姿は確認できませんでした。」


「なに!?

…どういうことだ?」


クリスは取り乱しそうになる自分を
必死で抑える


「ユキノ様だけではなく
ケシャの姿の見えません。

それに、室内には争ったような痕跡と
微かですが刺激臭が残っておりました。


おそらく
何者かがユキノ様を攫ったものだと…。」


「…。」

淡々と話すジャンにクリスは言葉を詰まらす


「すぐに私兵と影の物を放ちました。
大事になればユキノ様に危険が及ぶ
可能性があるので最小限で動いております。」


「…アメリアは?」


「は?」


「アメリアを
見張らせていた者たちからの報告は?」


「はい。
アメリア様はこの会場に入ってから
今に至るまで一歩も外に出ておりませぬ。」


「…そうか。」


「クリス様?」


「よい。
全力でユキノとケシャを探せ。
ポールや私の私兵も伝えろ。
城内の事については私から陛下に許可を摂る。
この件は他言無用だ。

私は怪しまれないように
宴が終わるまで会場に残る。
行け!」


「はっ!」


ユキノ…
どこへ行ったんだ?


溢れだす不安に必死に耐えながら
クリスは両陛下の元へ足を進めた
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