magnet


愛架は溜めていた息を吐くとパンッと手を合わせた。何なんだ今度は……


「名前!」


「名前が何ですか?」


「名前と敬語!湊くん。その後輩ポジションから脱出した方がいいよ」


何それ。と声を上げたくなったが、何も言わない。


キラキラと輝く目になればきっと誰にも止められないから、苦笑い気味に見るしかない。


「はい。まずは心菜って言ってみて」


「……」


「こーこーな」


まるでオウムに言葉を覚えさせようとしているみたいだ。何やってんだか。


でも、湊は口を閉ざしたまま視線を宙に浮かせ言おうとしない。


視線をアッチへコッチヘ。時折私へ。


「……照れてんの?」


あぁ、思わず声を上げてしまった。




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