magnet


どうしていつも私はこうなのだろう。変わりたいと思ってるのに変われない。


『心菜は狡いよ。私が頑張っても出来ないことを簡単にやってのけるのに、簡単に投げ出すなんて狡い』


「っ……」


嫌な事を思い出してしまった。


あの日の、あの子の言葉、表情だけは消すことが出来ない。


昔の事で、昔の弱さで、ちゃんと今があって、今は違う。そう思っていた。


もう忘れる事ができたと思ったんだけどな。今更振り返る事もしたくないけれど、やっぱり何も変われてないと感じてしまう。


あの時は期待が掛かるのが嫌で逃げて。


今度は負けるのが嫌で逃げた。


「逃げてばかり……だ」


頬を抜ける風は何故かとても冷たくて、心を吹き抜けていくようだった。





< 166 / 215 >

この作品をシェア

pagetop