magnet
どうしていつも私はこうなのだろう。変わりたいと思ってるのに変われない。
『心菜は狡いよ。私が頑張っても出来ないことを簡単にやってのけるのに、簡単に投げ出すなんて狡い』
「っ……」
嫌な事を思い出してしまった。
あの日の、あの子の言葉、表情だけは消すことが出来ない。
昔の事で、昔の弱さで、ちゃんと今があって、今は違う。そう思っていた。
もう忘れる事ができたと思ったんだけどな。今更振り返る事もしたくないけれど、やっぱり何も変われてないと感じてしまう。
あの時は期待が掛かるのが嫌で逃げて。
今度は負けるのが嫌で逃げた。
「逃げてばかり……だ」
頬を抜ける風は何故かとても冷たくて、心を吹き抜けていくようだった。