magnet
朔が引き止めるだけでドロリと取り繕った表面が崩れだす。
崩れ落ちるのを止めるかのように、嘲笑うかのように短い笑いを一つ零す。
「もう終わり、最低すぎて逆に笑えるよね」
「最低でもいい。でも俺は「そもそも好きなんてただの思い込み。私も……湊くんも……」」
じゃあ。と言って歩き出した。そして、心中でごめんと謝った。
こうやって逃げてしまうのは簡単。
本当の感情を言葉にしてぶつけるのは難しい。
今のは嘘だ。全部嘘。
全てがうまく行くように、なんて無理な願いだった。
「痛いな……」
ズキズキと突き刺さった破片は抜ける事を知らず奥へ抉るように刺さり続ける。
ギュッと唇を噛み締めた。