magnet
私が固まって動けないでいると力強く腕を引っ張られた。
「っ!?」
「さっさと帰ろう」
引っ張ったのは教室の入り口にいたはずの仁。
あぁ、また気を使ってくれたんだと漠然と思う。
その証拠に歩く速度が早い。普段こんなに早く歩かないくせに。
何でこんなに気を使ってくれるのだろう。何で私なんかに……そう。
私なんかに……。
「も、いいよ。仁」
聞こえないだろうと思った声量でも相手にはちゃんと届いていて、歩くのを止めて振り向いた。