magnet


確実に縮まっていく距離。すれ違うまでがスローに感じて、急に酷いことを言った罪悪感を感じた。


嘘なのに。嘘も誤魔化しも嫌いなのに、そうしてしまった。


また、今更な事を考えてしまう。


「――!」


落胆したとき、思わず息を飲んだ。


すれ違い様に軽く触れた手と手。


たまたまなのか、私が無意識の内にしてしまったのか。真相は分からない。


数歩歩いた所で振り返るも相手は振り返らない。


一瞬触れた温もりが妙に懐かしくて悲しい。


「……」


ギュッと手に力を込め、再び進行方向へと向き直った。




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