magnet
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まだまだ自分をさらけ出すのは難しい。
ましてや、この空白の空間を埋めるのはもっと難しかった。
それでも、変に張っていた気を緩める事は出来ていた。のだけど……
「……っ」
今の今まで鉢合わせをしなかなったのが奇跡だったのだろう。いや、今までそうならないように気をつけていたのだから当然だ。
気を、緩めすぎていた。
相手はこっちを見据えて歩いてくる。こっちは何とか俯くのを堪えて視界に捉えないように前を向いた。
相手に気付かれている以上、露骨に逃げるなんてことは出来なかったのだ。
無意識に息をするのを最小限に抑えた。