magnet
一杯一杯なのは変わらないのに一対一でも苦手意識はあれど怖いとは思わなかった。
イメージとしては、後ろは崖じゃなくて壁。それも逃げ道を塞ぐ壁ではなくて支えてくれる壁があった感じ。
思いの外、仁の言葉が効いたのかもしれない。愛架も同じように思ってくれてるならと安心したのかもしれない。
そんな自分に少し苦笑しつつも、ようやく全部話し終えると「こう言うのもアレだけど話してくれて嬉しい」と言った。そして、続ける。
「私励ましたりするの得意じゃないからちゃんと言えないけど心菜は弱くなんかないし、ちゃんと変わってもいるよ。それは絶対そう言える」
絶対だなんて言われて戸惑う。私自身はそうは感じない、動けないままで成長しないまま。だから、返事にも詰まってしまった。
「そう、なのかな」
「そうだよー。まずね、最初心菜と話したとき何て言ったと思う?」
「え、覚えてない」
どうしてここでそんな話なのだろうかと思うけれど何も言わず、次の言葉を待った。