magnet


どちらにしろ。


キツく言えば坂上さんには関わりたくないのだ。


短く息を吐いて前を見据えれば、坂上さんもまた此方から視線を外そうとはしない。その状態のまま、相手が先に口を開いた。


「……そう。じゃあ、一つだけね。その曲、こっちの原曲の人の方がいいよ」


素早い動きで私の手にあったCDを差し替えるとヒラヒラと手を振って店から出ていった。


まだ何かを言われそうな気がしていただけに、簡単に去っていってしまったのは拍子抜けで、ただただCDを持って頭を傾げるばかり。

「ねー心菜ー…ってそれ買うの?」


頭を傾げてからすぐ、買うのであろうCDを持った愛架がやってきた。愛架も同様に、違う意味で首を傾げる。


「それなら家にあるよー。良かったら貸すけど」


「あー……うん……自分で買うからいいよ」


「でも何で原曲の方?」


「こっちの方がいいんだって。坂上さんが」


「坂上さん?」


「……ねぇ。このまま愛架の家に行ってもいい?」


普通に受け答えをしていながらも、そろそろ私の頭はパンク寸前だった。





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