magnet


「……」


ああ、でも……


不安にはなってるけど、愛架の言ったことは事実なのかもしれないとぼんやりと思う。


気が付けば会ったらどうしよう、何言おう、とばかり考えている自分がいた。


真理亜ちゃんが去って、数分かそれ位立ってから動き出したが、まだまだ考えが尽きない。


そうして。考え事をしていたから悪かったのか、酷いこと言ったツケが回ってきたのか。


「うわっ!?」


「っえ……」


階段を上り終える直前、肩と肩がぶつかり後ろに倒れる体。どうしても力が入らず、踏ん張りが効かなくて重力に勝てなかった。


落ちる……?


そう思ってる瞬間はやけにスローで、相手の驚く顔が鮮明に見えた。


ギュッと目を閉じるのが早かったか、全身から力が無くなるのが早かったか。とにかく目の前が暗くなった。


「先輩!!」


直前に聞こえた声は、きっと想い続けていた結果の幻聴なのだろう。きっとそう。そうに決まってる。


馬鹿だな。私。こんなにも朔を――……



< 188 / 215 >

この作品をシェア

pagetop