magnet


――夢を見た。


中学の頃の夢。一年生の間は絶対に運動部に入らないといけなかった中学校。


あの頃の私は陸上部で、嫌々入っていたけど、それでも足が速いと周りの人達から誉められていた。


でも特にそれに対して何も感じていなくて、どうでもいいとさえ思っていた。ただ単にすごいと言われている内はよかった。


だけど……すごいと言われて次にくるのは期待。


昔から期待をされるのは嫌いだった。期待して溜め息をつかれるのが嫌いだった。


そうなるのが嫌で、そうなる前に逃げた。逃げるのは駄目だと分かっていたのに。


「心菜は狡いよ。私が頑張っても出来ないことを簡単にやってのけるのに、簡単に投げ出すなんて狡い」


分かっていたのに逃げたから一番仲がよくて、一番頑張ってた子にそう言われる始末。


何か言おうとしたけどこれ以上何か言って嫌われるのが怖くて言えなくて、その恨んだような目が怖かった。


中学生なんて幼稚なもので、その子とはそれきり。話をする事もなくなった。


きっと、中途半端な私に怒りを感じているのだろう。そう思って過ごしていた。


それから怠惰で退屈で。ずっとそれが続くのだと思っていた――……。




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