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突然の事に驚いていると先生は真面目な顔つきに変わった。
「ちゃんと力をつけなさい。細すぎるから力が入らなくて階段から落ちちゃうのよ。何人か来てたお友達に聞いたけれど、貴方最近食べてないんでしょう?」
「はぁ……」
話してくれた頬を擦りながら曖昧に返事を返す。
説教されてばかりだな。
「湊くんがギリギリ支えたからよかったものの。その綺麗な顔、潰したかったのかしら?」
笑っているんだけど笑っていない目がなんだか怖い気がする。
「……って私階段から落ちたんですか?」
「湊くんがそう言ってたわ。貴方は落下で意識が飛んじゃってたけど……覚えてないの?」
覚えてない……わけでもないな。うん。
あの落下の感覚をまだ覚えてる。気分のいいものじゃないのは確か。
「人とぶつかって、弾かれた感じらしくて、相手の子は体格が良かったから相原さんは余計踏ん張れなかったみたいなの」
そんな落ち方をするなんて情けない。
でも、今こうして無傷で居られたのは先生が言うように支えられたからなのだろう。
もし、あのまま落ちていたらと思うと……私はホッと胸を撫で下した。