magnet
「!」
目先に小さな黒い箱とピンクのリボン。
思わず目をしばたたいた。
「……私が用意してると思ってなかった?」
さっきとは打って変わって相も変わらずな無表情。
それも今更だから気にしない。
「手作り……ですか?」
「まぁ。手作り」
嬉しいと言えば嬉しいけど、この人の作るお菓子が壊滅的なのを身を持って体感しているから妙な汗しかでない。
それでももらう事に変わりはないけど。
「――ありがとうございます。大切にしますね」
「食べる気はないの」
「あ、食べます。食べますよ。ちゃんと」
無意識に口が滑ってしまった。
「……愛架に手伝って貰ったから多分大丈夫だと思うよ」
と分かりにくいくらいのムッとした表情を作り出す。微妙な表情の変化を見つけるのが面白かったりする。