magnet
「ほら!湊くん!」
ボケーッとしていると、激しく体を揺さぶってきた。黙って従って外を見ると広がる閑散としたグラウンド。
「誰もいなくない?」
「いるよー。ほら、音楽室あるでしょ?その前」
グラウンドから目を離し、視覚のギリギリ映る校舎によく目を凝らして見ると人影が見える。
だけど、さすがに誰だか分からない。
「ね」
そうでしょ?と言わんばかりに告げてくるのでもう一度確認の為に目を凝らす。
「……ごめん。誰か分からない」
「えー?私は分かるけどな。湊くん、今日は黒いパーカー着てたし、絶対そうだよ」
「……」
朝会った私ですら着ていたパーカーなど覚えていない。
いつ湊くんを見たのか知らないが、そんな事まで見ているとは驚き以外の何物でもない。
よって、ちょっと……いやかなり、愛架が怖いと思ったのはここだけの秘密だったりする。