magnet
四時間目の移動教室でバッタリと例の黒いパーカーを着た人物に出会った。
「あ」
「げっ」
あ。と声を上げたのは湊くん。げっ。と声を上げたのは私。ちなみに隣では愛架のきゃっ。と小さく歓声にも似た声が聞こえた。
「ここちゃん先輩、こんにちはー。隣の方はお友達ですか?可愛い方ですね」
「悪かったわね。私は可愛くなくて」
「そんな事言ってないですよ。ここちゃん先輩も可愛いですよ。そう思いますよね?」
と、愛架に話し掛ける。
きっと愛架は嬉しそうにしてるんじゃないかな。と思いながら隣を見ると、ジーッと湊くんを見ていた。
それはもう真剣に。
そんな状態のまま、口元だけ笑って
「あ、うん。心菜は可愛いよね。あ、名前は愛架って言います」
と言った。不自然すぎる様子がなんだか気味が悪かった。