magnet


お昼食べるのは次の試合の後だよ。と怒られたので仕方なく飴(愛架がくれた)を口の中で転がしている。


もう試合なんか見る気も起きなくて壁を背に座り音だけを聞いていた。


「あ!心菜、篠田さんが湊くんに接近を!」


突然緊急事態のように声を上げるも私は決して顔を出さなかった。


仁を忘れていても篠田さんは記憶にある。今日教えてもらった子でしょ?可愛い子。


その子が湊に接近……


「愛架の好きそうな光景だね」


カラカラと口の中で飴が音を立てた。


「うん。そうなの……!じゃなくて。いいの?」


「いいよ」


愛架が言いたいのは湊が篠田さんにとられちゃうとかなんとかの話だろう。


別に私はそうなっても困らないし、それは湊の勝手だ。


放っておけばいい。


尚も動かないでいると、試合開始の合図らしき笛が鳴った。




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