magnet


わざわざご丁寧に実況をしてくれているので、その風景を思い起こしながら聞いていた。


「今回はピンチかもね。相手と体格差があるよ。まだ成長段階の一年生じゃ……力負けしちゃうかも」


窓には眩しい程の太陽が降り注いでいた。ちょっと眩しいな。


「あ、湊くんボール取ったよ!って……あ、わ、スリーポイント!?」


その声と同時に沸き上がる歓声。


「スリーポイントって何?」


「スリーポイントはね……簡単に言えば遠くからシュートすれば三点もらえるシュートなんだよ」


「すごいの?」


「すごいよ!あの細い腕にそんな筋力があるなんてね。相当の練習も必要だし。これはちょっと面白い事になったかも」


「へぇ……やるじゃん」


ウキウキする愛架には聞こえないように呟いた。


今だけは率直にそう思えたから。





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