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髪を手櫛で直し、またクルリと向きを変えると呆気にとられている篠田さん。
「え、え?」
「……先輩が起き上がらない内に戻った方がいいよ」
と一言言い、本当は先輩の居る先を通るハズだったけどわざわざ進行方向を変えて歩こうとした。
「ここ先輩!」
「はい!?」
だが、ガシッと華奢な見た目からは想像もつかない力で引き留められ、ビックリしてしまった。
「あの……!」
「ここちゃん先輩!」
篠田さんが何かを言う前に遮るのは湊。
あぁ、だから早く立ち去りたかったのに。
足音、一瞬男の小さな悲鳴、足音。ですぐに湊が隣にやってきた。
「篠田。先にここちゃん先輩借りていい?」
「え?あ……」
戸惑ってる篠田さんをよそ目に私の空いている手を引き歩き始めた。