magnet
「――でももし、付き合う事になっても、その相手が誰か別の人を片隅に想っていたらどうします?」
ボールをバウンドさせようとした手を止めた。
そして、考えてみようとして止めた。
「もしも話をそこまで掘り下げる必要性はないよね」
「――それもそうですね」
会話が途切れてもその場を二人とも去ろうとしない。私はもう少しここにいたい気分。
そんな気分になっている自分に気付いて不思議な感覚に取り込まれた。浮き足立っているようなそんな感覚。
そうか。私はどこかで喧嘩腰じゃなくて湊と普通に話すことを望んでたのか。
気分が凄く穏やかだ。
言って、みようか。
「――湊」
「はい?」
「これからはさ、普通に話す。だから、湊も……」