magnet


プリントの最後の空欄を埋めれば湊は机に倒れ込んだ。


「お疲れ」


「数学なんかこの世からなくなっちまえばいい」


「球技大会の時の強気はどうしたの」


うーっと唸るだけで返事はない。


そっとしておいてやろうと鞄を肩に掛けてスッと立ち上がる。


「あ……」


と聞こえたかと思うと袖を掴まれた。


「っ……ビックリした。何?」


「あー……っと……」


モゴモゴと口ごもる。何も用がないのだろうか。


湊って時々ちょっと様子がおかしくなるよね。


「……教えてくれてありがとうございました。ここちゃん先輩」


なんて思っていたところの不意討ち。


「どう、いたしましてって、それだけ?」


「それだけ、です」


何なんだ一体。



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