magnet


首を傾げながら表情を見ようとするもうつ向いていて見えない。


「何考えてる?」


「――先輩の事」


私、の事?


「っ――。そ、そう、何か照れるな。うん。今までじゃ絶対に聞けない答えだったから嬉しいな。私帰るね」


一気に言って早足に教室を出た。


驚いた。驚いた。


深い意味は無いんだろうなと思いつつも真剣な雰囲気に戸惑う。


『嬉しいな』


何も考えずに口から出た言葉を思い出した。


「嬉しい……」


そうか。私は嬉しいのか。鼓動、まだ早いや。


「どういう意味で言ったんだろ……」


気になって。気になって。


こんなの……





< 92 / 215 >

この作品をシェア

pagetop