エルタニン伝奇
「な、何だ」
「何が起こった? いや、この声は・・・・・・」
おろおろと狼狽えながら、何人かの神官らは、気味悪そうに辺りを見渡す。
すでにトランス状態に入っていた神官は、微妙な空気の変化に、大きく身体が傾いでいる。
一度儀式に入ると、鈴の音は祝福が降りるまで鳴りやまない。
神官らの狼狽えようもそっちのけで鳴り響く澄んだ鈴の音は、返って場の不気味さを煽り立てた。
老齢の最高神官までもが、未曾有の出来事に、ただ茫然としている。
そんな中、中央に跪いていた王子が、不意に立ち上がった。
彼はそのまま、最高神官に背を向けて、すたすたと神殿より外に出る。
「お、王子! お待ちなされ!」
まだ儀式は終わっていない。
まして今は、ただの祭事ではない。
最も重要な、即位の儀式である。
鳴り響く鈴の音の中、最高神官は叫びながら、王子を追いかけた。
神殿の入り口で、やっと王子に追いついた最高神官は、彼が撫でているものに、目を奪われた。
人の三倍ほどの大きさの蛇が、宙に浮いている。
この翼を持つ蛇は、コアトルという、この国独特の生き物である。
主に移動手段として使われる、そう珍しいものではない。
が、この王子のコアトルは、他のどのコアトルとも違うのだ。
そもそもコアトルは、町で交通手段として使われている、何の能力もないものから、貴族や上級兵士が使う、特殊能力のあるものまで様々であるが、王家の、世継ぎの御子のコアトルだけは、どのコアトルとも違う運命を背負っている。
「何が起こった? いや、この声は・・・・・・」
おろおろと狼狽えながら、何人かの神官らは、気味悪そうに辺りを見渡す。
すでにトランス状態に入っていた神官は、微妙な空気の変化に、大きく身体が傾いでいる。
一度儀式に入ると、鈴の音は祝福が降りるまで鳴りやまない。
神官らの狼狽えようもそっちのけで鳴り響く澄んだ鈴の音は、返って場の不気味さを煽り立てた。
老齢の最高神官までもが、未曾有の出来事に、ただ茫然としている。
そんな中、中央に跪いていた王子が、不意に立ち上がった。
彼はそのまま、最高神官に背を向けて、すたすたと神殿より外に出る。
「お、王子! お待ちなされ!」
まだ儀式は終わっていない。
まして今は、ただの祭事ではない。
最も重要な、即位の儀式である。
鳴り響く鈴の音の中、最高神官は叫びながら、王子を追いかけた。
神殿の入り口で、やっと王子に追いついた最高神官は、彼が撫でているものに、目を奪われた。
人の三倍ほどの大きさの蛇が、宙に浮いている。
この翼を持つ蛇は、コアトルという、この国独特の生き物である。
主に移動手段として使われる、そう珍しいものではない。
が、この王子のコアトルは、他のどのコアトルとも違うのだ。
そもそもコアトルは、町で交通手段として使われている、何の能力もないものから、貴族や上級兵士が使う、特殊能力のあるものまで様々であるが、王家の、世継ぎの御子のコアトルだけは、どのコアトルとも違う運命を背負っている。