エルタニン伝奇
『わらわは当時、まだ幼子じゃったからの。サダルスウドの衰えなど、感じられぬ。とにかく見つからぬように、との一心で、コアトルを使った』
ラスの疑問は晴れない。
コアトルを使うとは、どういうことなのだ。
『兄上なら、わかるじゃろ。我々のコアトルは、他のコアトルとは訳が違う。主(あるじ)に忠実というのは、何も我々が躾けるからではない。まさに一心同体ともいうべき繋がりの強さじゃ。その気になれば、コアトルが主の姿を模(かたど)ることなど、そう難しくはない。それともこれは、わらわの力を持って、初めて成し得る技なのかの?』
くくくっと喉の奥で笑うサダクビアを、ラスは呆気に取られて見つめた。
コアトルが、主を模る・・・・・・。
そのようなこと、初めて聞いた。
おそらく、この辺りに近づいた者だけでは足りなくなったため、コアトルを少しずつ取り込んでいたサダクビアは、よりコアトルとの繋がりが深くなっていたのだ。
『じゃが、焦るあまりか、しくじった。コアトルをわらわの姿に変えて、氷に閉じ込める途中で、意識が奪われた。気づけば、わらわは元のように氷の中におるではないか。が、目の前にはわらわが倒れておる。わかるか?』
「・・・・・・つまりこいつは、お前の抜け殻なわけか」
ラスのメリクを抱く腕に、力が入る。
ようやくわかった。
双子でありながら、メリクがラスと同じ歳ではないのは、おそらく封じられていた期間分、成長が止まっていたのだ。
いや、‘サダクビア’が身体から抜け、コアトルに移った時点で、力を失ったのかもしれない。
それ故、氷の中で力を使っていた期間分、今は緩やかな成長速度になっているためなのか。
ラスの疑問は晴れない。
コアトルを使うとは、どういうことなのだ。
『兄上なら、わかるじゃろ。我々のコアトルは、他のコアトルとは訳が違う。主(あるじ)に忠実というのは、何も我々が躾けるからではない。まさに一心同体ともいうべき繋がりの強さじゃ。その気になれば、コアトルが主の姿を模(かたど)ることなど、そう難しくはない。それともこれは、わらわの力を持って、初めて成し得る技なのかの?』
くくくっと喉の奥で笑うサダクビアを、ラスは呆気に取られて見つめた。
コアトルが、主を模る・・・・・・。
そのようなこと、初めて聞いた。
おそらく、この辺りに近づいた者だけでは足りなくなったため、コアトルを少しずつ取り込んでいたサダクビアは、よりコアトルとの繋がりが深くなっていたのだ。
『じゃが、焦るあまりか、しくじった。コアトルをわらわの姿に変えて、氷に閉じ込める途中で、意識が奪われた。気づけば、わらわは元のように氷の中におるではないか。が、目の前にはわらわが倒れておる。わかるか?』
「・・・・・・つまりこいつは、お前の抜け殻なわけか」
ラスのメリクを抱く腕に、力が入る。
ようやくわかった。
双子でありながら、メリクがラスと同じ歳ではないのは、おそらく封じられていた期間分、成長が止まっていたのだ。
いや、‘サダクビア’が身体から抜け、コアトルに移った時点で、力を失ったのかもしれない。
それ故、氷の中で力を使っていた期間分、今は緩やかな成長速度になっているためなのか。