遠い夏から、あの頃のキミへ
お風呂から出て、下着姿のまま冷蔵庫を覗いてみる

牛乳、チーズ、お豆腐、レタス、トマトなどの野菜
そのまま朝食になるようなものは無さそうだ

特にお腹も空いていないので、牛乳をコップに注いでちゃぶ台へと座る

シャワーを浴びてサッパリしたお陰か、部屋の温度はさっきより気にならない

備え付けのエアコンがあっても、苦手な私は今年も使ったことはない

半ば習慣のようにテレビをつける
特別、観たい番組があるわけでもないが、静かすぎるのは何か落ち着かない

コクコクと牛乳を飲みながら、気づいたら時計は11時30分をまわるころ

約束の時間まで1時間
駅前で待ち合わせ

気が重かった
この時期に会う理由なんていくつも思いつかない

コップの中の牛乳は空になっていた

「……はぁ」
タメ息一つ

立ち上がって、コップを流しで洗う

テレビでは流行りの芸人が、若い女子アナと、どこかの商店街をバカ笑いしながらまわっている

よく見る光景
ありふれている世界

嫌いとは言わない
ただ、面白いとは思えなかった

昔はこんな私ではなかったと思う

年相応に純粋だったと思うし、きっと普通の子供だった

でも、あの夏の日から、私の世界は変わった
私は変わった

知らないという罪に気づいてしまった

世界が優しくないと知ってしまった

あの日から、瞳が写すものすべてが嘘のようで

でもそれが、世界の真実だと知って、

はじめて
――死にたい……
そう思った
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